「性依存」という言葉の正確な意味
「性依存症」という言葉はメディアでよく使われますが、医学的には正確な用語ではありません。この言葉は社会的な議論やメディアで頻繁に使われるものの、臨床的な正確性を欠いているのが現状であり、著名人のスキャンダル報道によって誤解やスティグマが増幅されがちです。
現在、医学的に正式な診断名として位置づけられているのは「強迫的性行動症(CSBD: Compulsive Sexual Behaviour Disorder)」です。これはWHOが策定した国際疾病分類ICD-11に収載されている診断名で、日本語では「強迫性性的行動症」と訳されます。
重要なのは、これが「性欲が強い」「異常な性欲」という話ではないという点です。CSBDは性や欲望そのものが問題ではなく、コントロール不能な反復性の性行動が中心的な特徴です。脳の仕組みで言うと、報酬系のアクセルが強く、衝動制御系のブレーキが壊れている状態であり、快楽を求めているのではなく、衝動を止められないという状態だと説明されています。
ICD-11によるCSBDの診断基準
WHOの基準では、CSBDの診断には以下のような特徴が必要とされています。
強く、繰り返される性的衝動または欲求があり、かつそれを制御できず、それが繰り返しの性的行動につながっている状態であることが大前提です。
具体的には次のような形で現れます。
- 性的行動が、本人の生活や日常活動、健康、身だしなみ、仕事・学業・家庭などの責任を犠牲にして、生活の中心的な位置を占めている
- 性的行動を減らそうと何度も試みたが、失敗を繰り返している
- 関係破綻、仕事上の問題、健康被害などの悪影響が出ても、その行動をやめられない
- 性的行動から満足感や快楽をほとんど、またはまったく得られないのに、それを繰り返してしまう
- こうしたパターンが、目安として6か月以上、長期間にわたって継続している
別の医療機関の説明では、CSBDの3つの特色として、①非常に強い性的衝動を反復して感じること、②その衝動の制御に頻回に失敗すること、③制御できないことによって自身や社会的な問題が起こること、という3つの特色を持ち、その結果として一定期間、反復的な性衝動が生活の中心になってしまったときに診断されるとされています。
なお、過去には男性の比率が高いと言われていましたが、現在では必ずしもそうとは言えず、人口の約3%程度ではないかと言われています。
セルフチェックリスト
以下は、ICD-11の診断基準を参考にした「気づきのためのセルフチェック」です。これは医学的診断ではなく、専門家や当サービスへの相談を検討する目安としてご活用ください。
過去6ヵ月程度を振り返って、当てはまる項目にチェックしてみてください。
- 性的な行動(自慰、ポルノ視聴、風俗利用、出会い系の利用など)が、生活の中心的な位置を占めている
- その行動のために、仕事や家庭での責任、健康管理、身だしなみなどが後回しになっている
- 「もうやめよう」「減らそう」と何度も決意したが、うまくいかなかった
- その行動が原因で、家族や配偶者との関係に亀裂が生じた、あるいは生じる恐れがある
- お金の使い方が原因で、経済的な不安や問題が生じている
- 行動の後に満足感や快楽をほとんど感じず、むしろ虚しさや自己嫌悪を感じることが多い
- バレることへの恐怖、罪悪感を強く感じながらも、行動を繰り返してしまう
- この状態が、少なくとも半年以上続いている
4〜5項目以上に当てはまる場合、CSBDの可能性について、一度専門家に相談することをおすすめします。それか、当サービスのご利用を検討していただけたらと思います。
チェックの結果、当てはまった方へ
このチェックリストに当てはまったとしても、それは「あなたが異常な人間である」ということを意味しません。
繰り返しになりますが、CSBDは脳の報酬系と衝動制御系のアンバランスによって起こると考えられている状態です。意志の力や根性の問題ではなく、脳の仕組みの問題である可能性が高いのです。
まとめ
✅「性依存症」という通称は医学的には不正確で、正式名称は「強迫的性行動症(CSBD)」
✅CSBDはICD-11(WHOの国際疾病分類)に収載された正式な診断名
✅診断の核心は「性欲の強さ」ではなく「コントロール不能な反復行動」と「それによる生活への深刻な影響」
✅ セルフチェックで当てはまる項目が多い場合は、専門家への相談を検討する価値がある
参考文献・出典
大石クリニック「強迫的性行動症」https://www.ohishi-clinic.or.jp/csbd/
ウィメンズヘルスケアオンライン「強迫性性的行動症:最新の国際診断基準で解説」
AFP BB「『強迫的性行動症』は精神疾患、依存症かどうかは未判断 WHO」
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